• 2017.12.20

    公正証書離婚をする上での基礎知識

    公正証書離婚をする上での基礎知識

    協議離婚後に生じるさまざまなトラブルを防ぐためには、弁護士なども推奨する公正証書離婚という方法を選択するのが理想です。

    この手法を使って離婚の取り決めを残しておくと、別れた夫婦に問題が起きても、その対処を行いやすくなります。

    また公正証書離婚にはさまざまなメリットがありますので、協議離婚の話し合いを始める前に、その基礎知識を頭にいれておくのもおすすめと言えるでしょう。

    今回は、離婚時に公正証書をつくる意味やメリット、デメリットなどの基礎知識を読者の皆さんと一緒に確認していきます。

    公正証書離婚とは?


    公正証書離婚とは、協議離婚で取り決めた内容を公正証書に残す方法のことです。

    初めてこの言葉を耳にする人の中には、離婚協議書と公正証書の違いに頭を悩ませる方々も大変多く見受けられます。

    離婚協議書というのは、夫婦が話し合いによって決めた内容を、互いに忘れないようにするために作られる書面です。

    これに対して公証人役場で作られる公正証書には、法的効力の低い離婚協議書や口約束とは全く異なる、大変多くのメリットがあると言われています。

    公正証書離婚が必要な理由とメリット

    公正証書離婚には、下記のような利点があると言われています。

    《夫婦の取り決めが無効にならない》

    長きに渡って法律事務に従事している公証人は、公正証書をつくる際に夫婦が取り決めた離婚協議書の内容について、法令違反がないかチェックをしてくれます。

    また当事者となる夫婦の身元についてもきちんと確認しますので、「自分が知らないうちに離婚協議書が作られていた!」といった主張により、取り決めが裁判などで無効や否認されることもないのです。

    離婚協議書が作れるほど話し合いをしている夫婦は、調停離婚や裁判離婚をする方々と比べて抱えている問題は少ない傾向があります。

    しかし将来的に生じた万が一とも言える状況によって取り決めが無効にならなにようにするためには、離婚協議書よりも公正証書をつくっておくのが理想と言えそうです。

    《相手に心理的なプレッシャーを与えられる》

    夫婦と公証人の三者で作成する公正証書には、これから慰謝料や養育費を支払う側に対して、精神的なプレッシャーをかけられるメリットがあります。

    これに対して夫婦2人で決めた口約束や法的効力のないメモや離婚協議書の場合、第三者を介さないことによって、支払責任から逃げようと目論む配偶者も少なくない実態があるのです。

    こうしたずる賢いパートナーの思うようにさせないためには、公証人役場で公正証書を作り、さまざまな支払い義務について相手方に認識してもらう必要があると言えるでしょう。

    《紛失しても大丈夫》

    公証人役場では、公正証書を3部作成します。

    そのうち1通は公証役場での保管となるため、万が一別れた夫婦の双方が離婚協議書を紛失してしまっても、大丈夫と言えるのです。

    また公正証書の保管期間が原本作成年度の翌年から20年となっていますので、まだ幼い子供がいる夫婦が離婚した場合においても、その子が成人するまでの間は取り決めが消えてなくなることはないと捉えて良さそうです。

    《養育費などの不払い対策ができる》

    公正証書の中に強制執行認諾約款を記載しておけば、裁判所への訴訟や勝訴の判決がなくても、養育費などを支払わない元パートナーの給与などの差し押さえができる形となります。

    これから離婚する旦那さんが「絶対に支払うから!」と言っている場合、多くの女性が公正証書の必要性を感じない傾向があります。

    しかし国の調査によると、離婚後に養育費がきちんと支払われているのはわずか20%ほどとされていますので、相手方が支払いから逃げてしまうことにより母子が困窮するリスクの高さを考えると強制執行認諾約款の入った公正証書をつくるのが理想となるでしょう。

    公正証書離婚にはデメリットもありますか?

    公正証書をつくること自体に、デメリットはありません。

    しかし面倒な手続きをなるべくやりたくないと思う方々にとっては、下記のポイントが難点と感じられることもあるようです。

    《公証人手数料などのお金がかかる》

    公証役場で公正証書をつくる時には、その手続きをしてくれる公証人に手数料を支払う必要があります。

    公正証書の基本手数料は、100万円以下で5,000円、200万円以下で7,000円といった形で証書内に記載された請求金額の合計によって変わってくる仕組みです。

    また1億円以下で43,000円である実態から考えると、一般的な公正証書離婚では数千円~5万円以内の手数料になると捉えておくと良いでしょう。

    《作成に時間がかかる》

    公正証書をつくる際には、まず夫婦の話し合いによって決まった内容を離婚協議書の形にする必要があります。

    その後、公証人との打ち合わせを経て公正証書の作成に移る形となりますので、夫婦2人でつくれる離婚協議書とくらべると、かなり多くの作成期間がかかると捉えた方が良いでしょう。

    また一般的な公証役場では、公正証書の完成までに1~2週間ほどかかる実態があるようです。

    こうした形で公正証書離婚をする場合は、夫婦の話し合いと公証人が作成作業をする期間が必要になります。

    《相手方が応じない可能性もある》

    養育費の不払いなどに対する強制執行の効力のある公正証書は、債務者となる側が作成に応じないケースも少なからず存在します。

    こうした状況になった場合は、相手方を説得しない限り、勝手に公正証書をつくることはできません。

    また公正証書を拒む配偶者の中には、離婚協議書の作成だけでなく「離婚自体をしたくない!」という主張をする方々も多い実態があるようです。

    もし離婚協議や公正証書の作成手続きといったことが全く進まず、八方塞がりの状態に陥った時には、離婚トラブルの専門家とも言える弁護士に早めの相談をするのが理想と言えるでしょう。

    離婚公正証書に記載すべきこととは?

    離婚後のトラブル予防につながる公正証書をつくる際には、下記8つの項目について夫婦でしっかり話し合った上で、公証役場に持ち込む離婚協議書の中にその内容を盛り込む必要があります。

    《親権・監護権》

    未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、親権と監護権を必ず決める必要があります。

    一般的には、親権者が監護者を兼ねるケースがほとんどのようです。

    これに対して親権者と監護者を別々に設定した場合は、何らかのトラブルが生じた時に、その形がデメリットになり得ることもあるため、注意が必要です。

    また家庭裁判所における実務の観点から考えると、親権者と監護者を同一にするのがより良い運用となるようです。

    《養育費》

    未成年者の子供の監護にかかる養育費は、父母が分担する形となります。

    しかし夫婦間の収入に大きな開きがあったり、妻が今まで専業主婦だったなどの場合は、非親権者となる父親が養育費の支払いをするケースが多いようです。

    基本的な支払い方は毎月払いとなりますが、両親の間に合意があれば、離婚の際に養育費の全額を一括払いにすることも可能です。

    養育費の取り決めをする際には、高校や大学への進学をするタイミングで一時的にかかる大きな費用や、病気などの治療費や入院費といった特別の費用も含める必要がでてきます。

    また養育費については、離婚後の父母における経済状況などによって変更手続きをすることも可能です。

    《面会交流》

    非親権者となる側と子供が会う時の約束事についても、公正証書の中で決めておく必要があります。

    しかし子供の成長によって在り方の変わってくる面会交流については、公正証書の中で契約した内容で成人まで運用できない実態もあるのです。

    例えば、高校生になった子供が全寮制の学校などに入学すれば、今までと同じルールでは面会交流できなくなります。

    また中高生なった子供は自分の意思で面会の実施ができる形となりますので、父母ともに面会交流について柔軟な対応をするのが理想と言えそうです。

    《財産分与》

    婚姻期間中に夫婦で築いた財産は、別れるタイミングで分割して清算する形となります。

    夫婦の貢献度に応じて配分が決められる財産分与も、基本は半分ずつ分割するのが一般的です。

    また財産分与は夫婦が離婚をしてから2年以内の請求が可能となりますので、離婚後に公正証書をつくる時には請求期限について注意をしてください。

    この他に現在ローンを支払っている住宅やマンション等がある場合は、夫婦2人以外に金融機関との契約関係を考慮しながら、さまざまな決定をする必要が出てきます。

    《離婚慰謝料》

    夫婦の一方に主となる離婚原因がある場合は、有責配偶者に他方の配偶者に対して慰謝料を支払う義務が生じます。

    一般的に慰謝料の支払いは一括払いがほとんどなりますが、有責配偶者の側に資力がないといった場合は、公正証書における執行証書としての機能が利用される形です。

    《借金や婚姻費用の精算》

    夫婦が別居している間の婚姻費用分担金が未払いであったり、片方の配偶者がパートナーの作った借金を立て替えて返済したなどの場合、その清算も離婚契約の中で行われる仕組みです。

    また離婚慰謝料の例と同じように支払い義務のある側に資力がない場合は、離婚後に分割払いする際の条件を公正証書の中に記載する必要が出てきます。

    《住宅の利用法》

    夫婦で一緒に建てた家に、資力の低い妻と子供が住み続けるといった内容も、公正証書の中に記載可能です。

    また今後も住宅ローンを夫が支払い続ける場合、その家に住む元妻と子供は所有者ではない形となりますので、そのまま暮らし続けて良いという約束事を公正証書の中に書くケースもあるようです。

    しかしこの場合、住宅ローンを借りている銀行側からすれば契約違反になることもありますので、離婚協議を進めながら契約内容を確認しておく必要があると言えるでしょう。

    まとめ

    離婚協議の中で決めた事項を曖昧にしないためにも、公正証書の作成は欠かすことのできない位置づけになると考えられます。

    また後々のトラブルが生じない公正証書をつくるためには、その前段階に作成する離婚協議書の内容を充実させる必要がありますので、夫婦2人だけでは詳細を突き詰めきれないといった場合は早めに離婚問題に詳しい弁護士に相談をしてみてください。

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